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AIソリューション

Hybrid Computing™ 応用例ジャンボデータを
扱うプライバシー保護AI

AI技術の進化とともに、監視カメラが急速に普及しています。監視カメラで収集した動画は1ファイル単位のデータ量の大きなデータ。POSやGPS情報などの小さなデータが大量に集まった「ビッグデータ」とは異なる呼び名として、ここでは「ジャンボデータ」と呼びます。ジャンボデータは、ビッグデータとは別の解析技法が必要です。

ジャンボデータを扱うプライバシー保護AI

パブリッククラウドにデータを移動させずプライバシーを守る

GAFAなどが世界中に提供する「パブリッククラウド」の普及に伴い、個人情報をクラウドにすべて集めた場合の情報漏洩リスクが懸念されています。AI技術の進化とともに、監視カメラで収集したジャンボデータをもとに心拍数や目線、メンタルコンディションなど開発時に想定していなかった解析まで可能になっていますが、個人情報の塊であるジャンボデータをクラウド上に保存することはセキュリティの観点において重大なリスクになります。そのようなリスクを回避するべく、AI解析においてジャンボデータをクラウド上に保存せず、監視カメラのそばで管理・解析する Hybrid  Computing™技術が生まれました。本技術ではクラウド上のAIが監視カメラ内のデータをクラウドに移動させることなく解析が可能。そのため、クラウドからの個人情報漏洩の危険性が低下しプライバシー保護が強化されます。

Hybrid Computing™技術に関して複数の国際特許と学会論文が掲出されており、MIT VFJ BPCC18最優秀賞を受賞し、分散AI実装のプラットフォームとして活用が始まっています。

データを移動させずプライバシーを守る

クラウドとエッジが融合した分散型セキュリティ

スマートストアなど高度なAIを活用するためには、複数の監視カメラを連動させる必要があり、主に下記の3つの方式が採用されています。

クラウドAI型はもっとも広まっている方式です。すべての動画をクラウドに集めて解析するため、クラウドの高度なセキュリティと強力な処理能力であらゆるAIが活用できます。半面、クラウドが攻撃されるとすべての顧客情報が流出してしまいます。

エッジAIは現在広まりつつある方式です。エッジ側にAIを実装するためクラウドにすべてのデータを集める必要はありません。エッジサーバーでは十分な処理能力を確保できないため、簡単な処理のみエッジサーバーでおこない、大掛かりな解析はサーバーでおこなうケースが一般的です。半面、エッジに多くのAIを実装する必要があり、それらすべてのセキュリティ管理が必要です。エッジサーバーのOSと通信を暗号化してセキュリティを実現していますが、AIアプリ自体のセキュリティホールは都度対応する必要があります。

Hybrid Computing™ (HC)は動画をエッジ上に残し、クラウド上のAIから解析する方式です。クラウドとエッジの間は使い捨ての分散処理ロジックがやり取りされるのみで、クラウドとエッジの負荷を動的に変更することができます。エッジ側はHCが自動的にセキュリティ更新され、複数のAIのセキュリティを個別に管理する必要はありません。動画もクラウドに集めないため万一クラウドが攻撃されてもAIアプリと処理中のわずかなデータが被害を受けるのみで、顧客情報がすべて流出するということはありません。今まで手動で組み合わせられてきたクラウドAIとエッジAIがHC技術によって動的に組み合わされることになり、新しい分散型セキュリティモデルが構築されます。

クラウドとエッジが融合した分散型セキュリティ

利便性とプライバシーを両立させることで、さらにAIを活用できる

複数の監視カメラを連動させるケースとして店舗内の人流解析があります。スマートストアなど高度なAIを活用した場合、特定の個人を識別し、一連の行動を追跡することが可能です。先行研究を進める国や地域では個人をAIで追跡する事例が増えつつありますが、GDPRのようにプライバシー情報をクラウドに集めすぎることに警戒する動きも強くなりつつあります。店舗は個人のプライバシーを侵害することは意図しておらず、適切な商品を顧客に提示することが目的ですので、利便性とプライバシーを両立させる接点を見つける必要があります。HC技術では、個人情報が含まれる未解析のジャンボデータは監視カメラ側に残し、AI処理を分散させて商品の動きのみをクラウドで追跡することが可能です。クラウドAI型ではジャンボデータをクラウドに集めるため利便性は向上しますが、プライバシーの侵害の恐れがあります。一方、エッジAI型ではクラウドにジャンボデータを集めないためプライバシーの侵害の可能性は低下しますが、時代の変遷とともに個人保護の必要性の変化や新しいAIモデルが開発された場合、柔軟に対応することが難しく利便性が低下します。HC技術ではクラウドAI型の柔軟にAIモデルを変更できる利便性と、エッジAI型のジャンボデータをクラウドに集めずにプライバシーを保護することを両立させており、より多くのAIをスマートストアなどで活用することができます。

利便性とプライバシーを両立させもっとAIを活用

成長するスマートシティを目指して

スマートシティを実現する基本的な概念に Cyber Physical System (CPS) という考え方があります。クラウド空間を「Cyber」、実社会を「Physical」とし、それらを適切に連携させるモデルです。5GやMaaSはCPSを実現する構成要素のひとつです。HC技術もCPSの構成要素として開発されました。CPSにおいて5Gはネットワーク通信網、MaaSはアプリケーションを担います。HC技術は動画などのジャンボデータを移動させずにAI解析を可能とするジャンボデータプラットフォームを担います。POSやGPSなどのビッグデータは今まで通りクラウドAI型が担っていくと考えますが、音や画像などの未解析生データ、つまりはジャンボデータは処理をすることができず現状は捨てられてしまっています。この捨てられているジャンボデータは、AIモデルの発展とともに新たな価値を創出できるでしょう。例えば、歩き方をAI解析して認知症の進行を測定する研究がなされています。このAIが実用化された時に捨てられていた過去のジャンボデータを新しいAIで解析することで、認知症の進行が長期にわたって測定可能になりQuality Of Life維持のための適切なリハビリプログラムを提供できるようになります。AI進化とともに捨てられているジャンボデータから新たな価値を創出できる成長するスマートシティをHC技術で目指しています。

成長するスマートシティを目指して