未経験でITエンジニアに転職するうえで年齢の限界はあるのか?

新たなキャリアとしてITエンジニアの道を目指している方の中には、ご自身の年齢について不安を感じている人もいるかもしれません。
「未経験者歓迎!」と企業が求人で打ち出していても、実際に応募してみたら「若い人しか採用してないんだよね〜」なんて言われたという話を聞くこともあります。
年齢は企業が採用選考するうえでポイントになることは間違いありません。
今回は採用する人事の本音を交えながら、未経験ITエンジニアへの転職に年齢がどう関係するのかをお伝えします。

人事目線でみた未経験ITエンジニアの年齢制限
未経験でITエンジニアに転職する方は少なくありませんが、採用の現場にいるとやはりそこには年齢の壁があることは事実としてあると感じます。
実際に当社でも未経験者採用の年齢制限として、基本的には30歳を目安としています。
例外的に30歳以上でも未経験者の採用を行っていますが、それでも35歳以上の方を採用する機会はほとんどありません。
未経験者採用を行っている他社の話を聞いても同様のケースが多いです。
大手求人広告媒体の発表データによると、IT業界における30代の未経験者転職の成功率は20〜40%ほどだといわれていますが、30代前半に比べると30代後半はより下がっている結果が見られました。
ただし、企業の採用指針や仕事の内容にもよるため、IT技術以外のポータブルスキルに秀でた人材を求めている企業であれば、前職の経験などを元に年齢にこだわらない採用を行っていることもあります。
あくまで個人的な感覚ですが、よほどの前職での活躍がない限りは35歳以上でITエンジニアに転職成功するケースは稀だと思います。
企業が年齢制限を設ける合理的な理由
もちろん企業側は感情論で年齢だけで採用可否を判断しているわけではありません。
その裏には企業としての合理的な理由がいくつかあります。
① 育成コストとリターンのバランスが合わない
未経験者を一人前に育てるには、会社側の育成・教育が必要となってきます。
たとえ資格を取得するなどの知識を得ていても、現場で活きる知識や仕事としての進め方などは経験を積まないと習得できません。
そこには当然企業側の人的・金銭的なコストの投資が必ず発生しますが、年齢が高いとその後の在籍期間(回収期間)が短くなるとみなされやすいのです。
若年層であれば、教育後に10年以上活躍する見込みも立ちますが、40代以降では「5年後にマネジメントに進めるのか?」という懸念が生まれてしまいます。
② 組織の年齢バランス・指導体制への配慮
IT業界の現場では20〜30代のリーダー・先輩社員が教える側に立つことが多いと言われています。
年上の部下を持つことでマネジメントが難しくなるというのは、年上を敬う文化がある環境ほど起きるリスクです。
チームの年齢構成や風通しに影響が出る可能性があるため、指導・連携しやすい年齢層を優先しがちであることは否めません。
ただし、近年は年功序列の風土が社会的に薄れつつあるため、必ずしも年齢制限の原因になるとは限りません。
③ 学習スピードや技術適応力への懸念
もちろん個人差はありますが、年齢が上がることによって吸収力や順応性は衰えてくるものです。
IT業界は技術の進化が非常に速く、継続的な学習が必須となるため、吸収力が高く、柔軟な発想ができる若い世代を求める傾向があります。
しかし、年齢に関係なく新しい技術に適応される方もいますので、あくまで傾向として捉えられたり、先入観が含まれるものだとも言えます。
④ 給与水準や待遇とのミスマッチ
年齢が高い求職者は、前職での給与水準が高めである可能性があります。
一方で、未経験採用枠は若手採用と同等の給与水準からスタートすることも多いため、「給与交渉が難航しやすい」「定着性に不安がある」と企業が感じることもあります。
また、本人が「給与は下がっても大丈夫です」と言っていても、早期離職の理由につながる懸念を持たれるケースもあります。
未経験職種の転職においては、収入が下がることも念頭に置く必要はありますが、長期的なキャリアプランの計画が大事になります。
今あげたような理由は企業側の合理的な判断の理由であり、決して年齢差別の意図があるわけではありません。
企業としては限られた枠の中で、「育成のしやすさ・将来の戦力化・組織との相性」などを総合的に判断しているということです。
年齢の壁を越える具体的な対策
ここまで読んで、「なんだ、やっぱりITエンジニアへの転職は年齢的に無理なんだ」とすぐに諦めるのはちょっと待ってください。
確かに年齢は採用選考のひとつの要素ではありますが、それが合否を決めるとは限りません。
むしろ年齢が高い方は、今までの実績を活かしたアピールの仕方や、経験が活きるポジションからIT業界に入るということもできます。
①社会人経験を“武器”として活かす
年齢が上がるほど、ビジネス経験も長くなりますが、この「社会人としての成熟度」は若手にはない強みになります。
例えば、以下のようなスキルや経験は、ITの現場で非常に重宝されます。
・顧客対応や社内調整といったコミュニケーション力
・報連相や議事録、業務手順書などの基本的なビジネススキルやビジネスマナー
・プロジェクト進行に必要な責任感や納期意識
いわゆるポータブルスキルについては、エンジニアとしての技術力が十分でない段階でも、現場の信頼を得る武器になります。
今までの社会人経験をうまく強みに変える視点を持つことで、面接などで自分をアピールすることができるようになります。
②ITスキルや学習姿勢の証明
ポテンシャルでの判断がされにくい高年齢での転職において、「ITエンジニアになりたい!」という熱意だけでは不十分といえます。
最低限の知識や学習姿勢を企業に対して示すためには、資格の取得が一番の近道です。
JavaやC言語などのプログラミング言語の資格を取得したり、CCNAなどのネットワークの資格を取得していれば、本気でITエンジニアを目指していることが嘘でないと面接官に伝わります。
即戦力まではいかないにしても、企業側の教育や育成に必要なコストがある程度下がるとなれば、採用を検討してもらえるチャンスも増えてくるでしょう。
また学習の実績を「何を使って、どこまでやったか」言語化しておくことも良いかもしれません。
ただし、面接を受ける企業の業務内容と、所持している資格に一貫性がないと意味が無いため注意しましょう。
③ポジション選びを戦略的に考える
これは年齢に関わらずですが、未経験でも歓迎されるITエンジニアのお仕事もあります。
たとえば、テクニカルサポートやヘルプデスクなどは、お客様と直接接する機会も多く、顧客対応の経験が活きるポジションだと言えます。
社内SEや運用保守の仕事も業務フローの改善や、社内外の人とのやり取りが中心となるため、社会人経験が強みになることが多いです。
インフラ系のエンジニアは開発系に比べて、資格取得の成果が評価されやすくもあります。
もちろん自分が目指す将来像から外れてしまっては意味がありませんが、自身を客観的に捉え、先を見ながら戦略を立てる必要があります。
「今はまだ技術や経験が足りていないが、こうやって勉強を進めて、今後こうなりたい」と謙虚かつ前向きに語れる人は、企業にとっても一緒に働きたい存在です。
逆に「自分はこれしかやりたくない」「こういう条件でないと嫌だ」とこだわりすぎてしまうと、「変にプライドが高い人と一緒に働きたくない」と周りから思われてしまう可能性が高いでしょう。
だからこそ、自分の経験からの強みであったり、学ぶ姿勢と柔軟性を言葉で示すことが転職成功の鍵だと言えます。
年齢の壁は“絶対”ではない
年齢を理由にお見送りされてしまうことは実際にあるかもしれません。
しかし、それは年齢そのものが原因ではなく、企業がその人を“未来の戦力”として想像できなかったからではないでしょうか。
それは企業側の想像力が不足している可能性もありますし、求職者側がうまく自身をアピールできなかったことが原因かもしれません。
「この人は当社にとって戦力になりそうだ」「この人と一緒に働けそうだ」と思わせる材料をきちんと示せれば、年齢の制限を乗り越えることは可能です。
ITエンジニアに限らず、未経験業種への転職に年齢の不安を感じている方は、ぜひ今回の記事を参考にして頂ければ幸いです。