未経験歓迎なのになぜ不採用?IT企業の人事が語る採用の本音

IT企業の人事として採用に関わる中で、私はこの相談を受けたことがあります。
実際、未経験者採用を積極的に行っている当社においても、未経験歓迎の求人に応募してくださった方を、不採用とすることはあります。
まず、IT企業の人事として断言しますが、未経験歓迎は誰でも採るという意味ではありません。
この記事では、IT企業の人事だからこそ語れる、ITエンジニアの「未経験歓迎」の裏側をお伝えします。

未経験歓迎なのに不採用になる理由
「未経験歓迎」と書かれているのに不採用になり、「自分のどこが悪かったんだろう」と落ち込むこともあるかもしれません。
しかし、IT企業の人事として採用に関わる中で、不採用の理由が「未経験だから」というケースは、実はほとんどありません。
IT企業は、応募者の技術スキルがないこと自体を問題視しているわけではないのです。
企業が見ているのは「今」ではなく「これから」
未経験者採用において、企業が見ているのは、今どの程度のスキルを持っているか、という点ではありません。
重視しているのは、未経験の状態から成長できるかどうか、教えたことを吸収できるか、同じ失敗を繰り返さないかといった、行動や思考の傾向です。
企業側が注目しているのは、どのように学ぼうとしているのか、分からないときにどう動くのか、指摘をどのように受け止めるのかという部分です。
未経験歓迎は「育てる前提」の採用
未経験者歓迎の採用は、現場が時間をかけて育てることを前提としています。
だからこそ人事と現場は、「教えれば伸びるかどうか」「成長の再現性があるかどうか」を、非常に慎重に見ています。
例えば、分からないまま手が止まってしまう、調べた形跡が見えない、失敗の原因を環境や他人のせいにするといった姿勢が見えた場合、技術以前に「育成が難しい」と判断されることがあります。
人の話を素直に聞けるか、注意・指摘されたことをちゃんと受け止めて改善できるか、自分の限界を勝手に決めていないかなど、成長に必要な要素を持っているかどうかを面接である程度見抜くことができます。
そもそも会社で働く事に向いている人物なのか
これはかなり根幹の部分になりますが、上記の要素を含め、そもそも会社という組織で働くことに向いているのかどうかを総合的に判断しています。
分かりやすい例をあげるとしたら、例えば「責任感」という要素。
自分の責任を果たさずに、中途半端に仕事を投げ出すような人に、仕事を任せたいとは思いません。
メンバーと上手くやっていけるのか、「協調性」という要素も大事です。
IT業界は様々な立場の方と協力して進めるプロジェクトが多いため、自分の利益と楽をすることばかりを優先して、周囲と衝突する人では困るわけです。
「ストレス耐性」が低すぎてメンタルを病んでしまう人を採用するのは会社としてのリスクにもなります。
そのような複数の要素を総合的に判断し、自社で仕事をすることが合っている人なのかを見極めるのが採用担当の仕事です。
独断と偏見を含めた「こんな未経験者は採用されない」
これはあくまで私個人として「この人は難しい」と判断する瞬間ですが、はっきりとした共通点があります。
それはスキルの有無や、優秀であるとか無いとかという話ではなく、仕事に向き合う前提が、自社と噛み合っていないと感じたときです。
仕事を教えてもらう前提の人
まず多いと感じるのが、「教えてもらう前提」で応募してくるケースです。
未経験歓迎という言葉を、「受け身でも許される」という意味で受け取ってしまっている人は少なくありません。
本来仕事というのは労働やスキルの対価に給与が支給されるもので、学校のように個人を成長させるためにあるわけではありません。
もちろん研修などを用意している企業もありますし、先輩たちが丁寧に教えてくれる企業はたくさんありますが、それは広い意味で未来への投資です。
当たり前のことではなく、当然そこにコストが発生していますし、成長を期待して貴重な時間を割いているのです。
質問をしない、調べた形跡がない、準備不足を当然のように語り、教えてもらうのが当然だと考えている人が、優秀なエンジニアに成長する可能性はほぼ皆無です。
こうした姿勢が選考の時点で見えてしまうと、評価は大きく下がります。
ただ、これは企業が採用難の中で母集団を集めるため、求人の際に新人研修などをウリにしすぎているという背景が原因にあるので、企業側にも求職者を勘違いさせてしまう非があると感じます。
“会話”が成り立たないタイプの人
よく「社会人にはコミュニケーション力が求められる」と言われますが、コミュニケーション力といっても、お喋りが得意だったらいいというものではありません。
むしろ大事なのは相手の言葉を聞いて受け止める力や、相手の言いたいことを察知して受け答えができることです。
聞いていることに対しての返答が、正しく返ってこないことが続いてしまうと、企業の中で一緒に仕事をすることが難しいかもしれないという判断になりがちです。
面接での指摘や質問に対して、すぐに言い訳が出てくる、話の腰を折る、自分の言いたいことを言うだけなど。
これらは単に協調性を見るポイントだけでなく、業務として指示やフィードバックを受け取れるかどうかの問題です。
未経験者ほど、この点はシビアに見られます。
転職の理由に納得感が無い人
また、転職理由が常に「環境のせい」になっている場合も、慎重な判断になります。
おそらくそれぞれに人間関係が悪かった、教えてもらえなかった、評価されなかったなど、事情があることだと思います。
しかし、どの職場でも同じ理由が繰り返されている場合、「次も同じことが起きるのではないか」と考えるのは自然な判断です。
他責思考な人だと面接官に受け止められると、採用の不安要素に繋がってしまいます。
逆にその問題に対してどのように取り組んだのか、自分で解決の道を模索して行動したのかが語れる人は強みとなる事もあります。
やりたいことが会社の事業とマッチしていない
さらに、仕事を「やりたいこと」だけで語る人も注意が必要です。
ITエンジニアになりたい、成長したい、スキルを身につけたい。
これ自体は悪いことではありません。
しかし、企業は自己実現の場であると同時に、役割を果たすことで利益を生み、その対価として報酬を得る場です。
入社を望む企業と、自分のやりたいことがどれだけマッチしているか。
それが自分と企業の未来のプラスに繋がるかをアピールできれば、企業からの印象もいい方向に向かうのではないでしょうか。
だからこそ、ちゃんとその企業のことを知ることも、自分自身のことを知ることも大切なのだと私は思います。
大切なのは入社後、前向きに仕事に取り組めるか
ここまで、やや辛口気味にIT企業の人事である私が思ったことを話してきました。
もしかしたらドキッとした方や、自分も当てはまると感じた方もいるかもしれません。
しかし、そう思えた方は改善への第一歩を踏み出すことができた方だと思います。
面接や選考は、企業と応募者がお互いに表面的に取り繕って騙しあうような場であるべきでないと私は考えています。
お互いにマッチするのかどうかや、納得点・妥協点をしっかり見極め、これから一緒の組織で働いていくためのお見合いに近い場所だと感じます。
就活をしている人にとって大事なことは、入社するということよりも、その後も前向きな気持ちで働いていけるかではないでしょうか。
私たち人事が未経験者採用で見ているのは、「この人を採れば戦力になるか」だけではありません。
「この人が、この環境で無理をせず、前向きに働き続けられるか」という点も同じくらい重視しています。
入社できるかどうかは一つの結果にすぎません。
仮にご縁がなかったとしても、それは能力不足ではなく、その会社との相性やタイミングが合わなかっただけというケースも少なくありません。
未経験歓迎という言葉の裏側には、育成に時間とコストをかける覚悟と同時に、応募者にも「仕事として向き合う姿勢」を求める現実があります。
だからこそ就活は、「受かるかどうか」だけで一喜一憂するものではなく、自分はどんな環境なら力を発揮できるのか、どんな姿勢で働き続けたいのかを見つめ直す機会でもあります。
この記事が選考結果に振り回される就活ではなく、自分に合った場所を見極めるためのヒントになれば幸いです。




