ITエンジニアは理系とは限らない。文系出身のITエンジニアの活躍ポイント
IT業界で働く中でその変化を感じることが多いですが、新卒でIT業界への就職を考えている方や、他業種からの転職を検討している方にとって、「文系出身の自分がITエンジニアになれるのか?」という不安は依然として大きいかもしれません。
「文系出身の先輩エンジニアも活躍しているから大丈夫!」という言葉を聞いても、漠然とした不安が消えないこともあるでしょう。
そこで、文系学科で身につけたスキルが、ITエンジニアとしてどのように評価されるのかを改めて調べてみました。
ぜひ自分の長所を伸ばすためのヒントにして頂ければと思います。
文系出身のITエンジニアが昔よりも増えた理由
IT業界は、電子情報産業とも呼ばれ、コンピュータや電化製品などの機器を扱う電気・電子工業を中心に発展してきました。
かつては、ハードウェアが主導していた時代であり、コンピュータを使って何かを生み出すためには、専門的な知識が不可欠でした。しかし、1980年代にパーソナルコンピュータが普及してからは、専門知識がなくてもコンピュータを扱えるようになり、その利用が一気に広がりました。
今では、子供でもスマートフォンやタブレットを自在に使いこなす時代となり、技術の進歩がどれだけ大きな変化をもたらしたかを実感せずにはいられません。
こうした技術の進化と時代背景が、IT業界における専門性のハードルを徐々に下げ、業界全体で理系や文系という従来の枠組みが薄れつつあります。
もちろん現在でもバリバリの理系エンジニアが、最新のIT技術を研究・開発している現場がありますし、そうした仕事に専門的な教育を受けていない人が従事するのは簡単ではありません。
しかし、その一方で、IT業界では幅広いスキルが求められるため、文系出身のエンジニアがその強みを発揮できる場面も増えてきています。
では、大学の文系学部で学んだスキルが、どのようにITエンジニアとして活かせるのか、具体例を挙げながら見ていきましょう。
学部ごとにみたITエンジニアに向いている習得スキル
【文学部】
専攻例: 日本文学、英文学、言語学、歴史学
磨かれる能力:文章力とコミュニケーション能力
意外かもしれませんが、ITエンジニアは文章のドキュメントを作成したり、読み取る機会が多くあります。報告書、申請書、手順書、説明書など、業務の中で常に文章と向き合う機会が発生します。
文章を作成する際には、相手に分かりやすいよう、正確に簡潔に伝える必要がありますし、文章を正確に読み取らないと、相手の求めているイメージとズレが発生してしまいます。
その際に、身につけた文章作成能力や読解力、説明力などが役に立つでしょう。
また、グローバル化が進む現代、海外の企業と一緒に仕事を進める機会などもあるかもしれませんし、エンジニアとして最新の海外製品を扱う際に、マニュアルが英語しかなかったなんてこともあります。
語学においても、身につけたスキルを発揮できる機会が増えてくるでしょう。
【経済学部】
専攻例: マクロ経済学、ミクロ経済学、経済政策
磨かれる能力:データ分析能力とロジカルシンキング
経済学では、統計データを用いて経済現象を分析するスキルが培われます。これにより、ITエンジニアとしてもデータベース管理やビッグデータ解析に強くなります。
特にソフトウェアを作る際にはデータベースを扱うことが多いため、データの扱い方や処理の方法を身につけておくと強みになるでしょう。
また分析に必要な論理的な思考力は、コンピュータを扱うエンジニアに必要とされています。
【法学部】
専攻例: 民法、商法、国際法、憲法
磨かれる能力:問題解決能力とロジカルシンキング
当社でも法学部出身のITエンジニアが多いのですが、法律もITもロジカルな分野だという共通点があるからだと考えています。
法的な問題に対処する際のアプローチは、法律や過去の事例を元に進めるため、ITにおけるトラブルシューティングやセキュリティ対策に通じるものがあります。
またリスクを予見し、それに対処する能力は特に情報セキュリティやコンプライアンスの分野で役立ちます。
知識量や経験量がモノをいうということも法律の世界と似ているところかもしれません。
【社会学部】
専攻例: 社会学、心理学、教育学、文化人類学
磨かれる能力:顧客視点の思考と調査・分析能力
社会や文化、人々の行動を理解する学問はユーザーが直感的に使いやすいシステムやアプリを設計する際に大きな助けとなります。
どんなに素晴らしい機能があっても、使う人が使いにくいと感じるシステムは嫌がられてしまいます。
ユーザーエクスペリエンスを求められる開発現場では、社会や人について研究し学んだ経験が活かされるでしょう。
また社会調査の手法を学ぶことで、ユーザーリサーチや市場調査においてデータを収集・分析する力が身につきます。
【経営学部】
専攻例: マーケティング、ファイナンス、経営戦略、組織論
磨かれる能力:プロジェクト管理能力とビジネスの知識
ITエンジニアは成長することで、チームリーダーになったり、プロジェクトマネージャーとして案件を抱える立場に立つようになります。
経営学部で学ぶリーダーシップのスキルは、そのようなITプロジェクトのマネジメント管理に直接的に応用できます。
さらにマーケティングやファイナンスの知識は、ITシステムがビジネスにどう影響を与えるかを理解する助けとなり、エンジニアとしての提案力を強化します。
BtoBのシステム開発が大半を占めるIT業界では、ビジネスの流れや常識を理解していないと、企業が求めるシステムを提案することができません。
文系出身ITエンジニアのキャリア活躍事例
実際に活躍するITエンジニアも文系学部出身の方が多くおりますので、その活躍の一例をご紹介します。
・Aさん ~法学部出身からネットワークのスペシャリストに~
Aさんは関東の国立大学の法学部を卒業し、事情によりアルバイトで生活していましたが、以前からIT業界への興味をずっと持ち続けていました。
当社に入社した後、一年目から学習に積極的で資格を取得したり、法学部で養った論理的な思考を活かし、案件を経験する中で成長していきました。
現在はネットワークスペシャリストとして、社内からもお客様からも頼られるエンジニアとなり、未経験出身エンジニアたちの憧れの存在となっています。
・Bさん ~経済学部と就業経験がユーザー視点へ活かされる~
Bさんは経済学部出身で、金融機関に勤めていました。仕事で日常的に使っていた金融系Webサービスを使っていましたが、使いづらさを感じていたそうです。
プログラミングスクールに通い、Web開発の基礎を学んだ後にIT企業へ就職し、数年はプログラマとしてプロジェクトを経験していきました。
後にシステム開発プロジェクトに関わった際には、自身の経験を元にユーザー目線に立ったUI/UX(画面の見た目や使いやすさ)改善を提案し、お客様から高い評価を頂きました。
・Cさん ~中学から得意だった英語を活かして東南アジアとの架け橋に~
Cさんは中学生の頃から英語が得意で、大学では国際学部で英語と海外の文化を学んでいました。半年間の海外留学も経験したそうです。
就活ではこれからITの重要性が増すと感じ、ITエンジニアを目指したため、自身が大学で学んだことはあまり活かせないと、最初は少し残念に思ったそうです。
しかし、入社した企業で開発をベトナムなどの海外企業に委託するオフショア開発を進めていく事が決まり、Cさんの英語力が認められ、ブリッジエンジニア(他社と協業する際に、すれ違いなく開発が進むようにするための調整役)の役割を与えられました。
年に数回、海外出張も経験するなど、日本に留まらずグローバルに活躍しているようです。
文理の区別にこだわるのは日本だけ
前述した学部ごとのITで活かせる習得スキルはあくまで一例ですし、人によっても差は大きくあるので、必ずしも全てに当てはまるというわけではありません。
さらに言えば、大学や専門学校で学んでない人は、ITエンジニアに向いているスキルを身に着けられないということではありません。
独学でそのような能力を身につける人もいますし、今までの人生の中で自然と備わった人もいることでしょう。
量子コンピュータや人工知能などの高度な研究分野に取り組みたいのであれば、専門的な教育が求められますが、一般的なITエンジニア職であれば、これまで学んできたことよりも、これから学ぶ意欲や柔軟性が重視される傾向があります。
そもそも、「文系・理系」という区別は、日本以外の国ではそれほど重視されていません。海外の大学では学問分野ごとに分かれているものの、それぞれが文系・理系の要素を含んでいることも多いです。
むしろ、特定の職業や専門分野に限定せず、科学、人文科学、社会科学、芸術などの幅広い分野を学び、広い教養を身につける「教養教育(リベラルアーツ)」と、医療、工学、法律、ビジネスなどの特定の職業技能や知識を深める「専門教育・職業教育」という区別が重視されています。
日本において文系・理系の線引きが強いのは、歴史的な教育制度の発展や大学入試、就職のシステム、社会的価値観など、さまざまな要因が絡み合っていますが、近年では海外の教育体系も取り入れられつつあります。
幅広い教養を学びながら、専門的な知識を深めることで、物事を多角的に捉える力や問題解決能力が養われ、コミュニケーション能力やイノベーションを生み出す創造力も高まります。
これにより、柔軟なキャリア形成にもつながるでしょう。
新しい環境に挑戦する際、不安を感じるのはごく自然なことですし、その一歩を踏み出すには勇気が必要です。自信がないのも当たり前です。
しかし、自分の長所や短所をしっかりと理解し、素直で前向きな姿勢で取り組み、知識や経験を増やしていくことで、後から自信が培われてくるものではないでしょうか。
今回の記事が、少しでも読んでいただいた方の自信に繋がればうれしく思います。
ここまで読んで頂きありがとうございました。