ビギナーITエンジニア講座⑥ クラウドを正しく説明できますか?

iCloudやGoogle Driveを思い浮かべる人もいれば、AWSという名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。
しかし、「クラウドとは何ですか?」と聞かれたとき、分かりやすく説明できる人は意外と多くありません。
今では当たり前のように使われている言葉ですが、その意味は広く、何となく理解したつもりになっている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「クラウドとは何か?」という基本から、なぜ多くの企業で利用されているのか、そしてクラウドエンジニアという仕事について、初心者向けに分かりやすく解説します。
AWSやAzureなどを扱うクラウドエンジニアを目指している方も、まずは基礎となる考え方を押さえておきましょう。
要するにクラウドってなんですか?
「クラウド」という言葉を聞くと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。
スマートフォンの写真を保存するiCloudや、ファイルを共有できるGoogle Driveやドロップボックスなどを思い浮かべる人も多いかもしれません。
実際、それらもクラウドサービスの一種です。
しかし、IT業界で使われる「クラウド」という言葉は、もっと広い意味を持っています。
クラウドを簡単に説明すると、
「どこかの誰か(どこかの企業)が所有し管理しているコンピューターを、インターネット経由で利用する仕組み」
のことです。
「クラウド」と聞くと、空に浮かぶ雲のような実体のないものをイメージするかもしれません。クラウドを意味するアイコンも雲マークだったりしますよね。
しかしクラウドとは雲のようにフワッとしているものではなく、実際にはクラウドの裏側には物理的なコンピューターが存在しています。
例えば、GoogleやAmazon、Microsoftなどの企業は世界中に巨大なデータセンターを保有しています。
その中には大量のサーバーと呼ばれるコンピューターが設置されており、私たちはインターネットを通じて世界のどこかにあるそれらを利用することができています。
YouTubeで動画を見る。Gmailでメールを送る。ChatGPTに質問する。Google Driveにファイルを保存する。
これらはすべて、どこかのデータセンターにあるサーバーコンピューターと通信しながら利用しているサービスです。
つまり、私たちは意識していないだけで、毎日のようにクラウドを利用しているのです。
クラウドが分かりにくい理由の一つは、人によってイメージしているものが違うことです。
一般の人が「クラウド」と聞くと、iCloudやGoogle Driveのような「保存場所」を思い浮かべることが多いでしょう。
これは正確には「クラウドストレージ」といって、データ保存を目的としたサービスの一つです。
一方でエンジニアが「クラウド」と言う場合は、AWSやAzure、Google Cloudといった、システムを動かすための基盤を指していることが少なくありません。
基盤(インフラ)とは、Webサイトやアプリを動かすための土台となる仕組みのことです。
ちなみにどちらも間違いではありません。
なぜなら、どちらも「他社が管理しているコンピューターをインターネット経由で利用する仕組み」だからです。
逆に、自分たちで所有・管理しているコンピューターやサーバーを利用する環境はクラウドとは呼びません。
例えばデータを自分のパソコンに保存したり、自分のパソコンでオフラインのゲームを楽しんだり、自社内に設置したサーバーにデータを保存する場合はクラウドではありません。
これらは自分たちで所有し、自分たちで管理する環境で、「オンプレミス(オンプレ)」と呼ばれています。
クラウドの対義語として覚えてみてください。
クラウドが流行ってる理由ってなに?
エンジニアが扱うクラウド基盤を深く理解するためには、なぜこの技術が生まれ、必要とされているのかを知るのが一番です。
クラウドの仕組みが登場する以前、多くの企業は自社でサーバーを購入し、社内に設置して運用していました。
これが前章で紹介した「オンプレミス」です。
例えば、企業でホームページを公開したり、社員同士でファイルを共有したり、勤怠管理システムを導入したりする場合、システムそのものを作る前に、まず動かすための環境を準備しなければなりませんでした。
・システムを動かすサーバーを購入する
・サーバーの設置場所を確保する
・社内のネットワークを構築する
・トラブルに備えてバックアップを準備する
上記のような対応が必要となります。
サーバーの価格は小規模な用途であれば数十万円程度で済むこともありますが、業務システムやWebサービスを運用する場合は数百万〜数千万円以上かかることも珍しくありません。
さらに、サーバーを設置する場所を確保し、24時間365日稼働させるための電源や空調を準備する必要があります。
また、故障への備えや定期的なメンテナンス、セキュリティ対策、バックアップの管理なども必要です。もちろんそれらに対応する人員も含めて。
もし利用者が増えて性能が足りなくなれば、新たなサーバーを購入しなければなりません。
逆に利用者が減ったとしても、一度購入したサーバーの費用は戻ってきません。
このように、オンプレミス環境には多くのコストと手間がかかっていました。
そこで普及したのがクラウドです。
クラウドを利用すれば、自社でサーバーを購入しなくても、必要なコンピューター環境をインターネット経由で利用できます。
必要な時に利用を開始し、利用量に応じて増減できるため、初期費用を抑えながら柔軟な運用が可能になりました。
例えば、数百人規模の利用を想定していたサービスが急激に人気になった場合でも、クラウドであれば比較的容易に性能を拡張できます。
逆に利用者が減った場合は、必要な分だけに縮小することもできます。
また、サーバー機器の保守やデータセンターの管理など、多くの作業をクラウド事業者に任せられることも大きなメリットです。
レンタカーを使うと、車を自分で所有をしなくても人数に合わせた性能が選べ、駐車場代がかからず、いつでもプロがメンテナンスしてくれた車に乗ることができます。
クラウドもそれと同じで、お金を払って快適なIT環境をレンタルしていると考えるとわかりやすいかなと思います。
もちろん、クラウドを利用してもシステムの設定や運用が不要になるわけではありません。
しかし、「サーバーを所有する」から「必要な時に利用する」へと考え方が変わったことで、多くの企業がより手軽にITシステムを活用できるようになりました。
現在では、大企業から中小企業まで、多くの企業がクラウドをサブスクや従量課金で活用して業務を行っています。
クラウドが普及した理由は、単に新しい技術だからではありません。
企業にとって、コストや運用負荷を抑えながら柔軟にシステムを利用できる、合理的な選択肢だったからです。

どんなクラウドがあるの?
では、実際にクラウドがどんな使われ方をしているのか、例を上げながらみていきましょう。
●クラウドストレージ
クラウドストレージは、データをインターネット上に保存する仕組みです。
一般的にクラウドと聞いて、よくイメージするのはこちらではないでしょうか。
友達と撮った写真をみんなで見れるようにネット上にアップしたり、仕事のデータをOneDriveの共有フォルダで受け渡した経験がある人も多いと思います。
ストレージとはデータをしまっておく場所のことで、パソコンでいうとSSDやハードディスク、USBメモリなどを指します。
代表例
・Google Drive
・iCloud
・OneDrive
・Dropbox
●クラウドサーバー
例えば企業が自社のホームページやWebサービスをユーザーに公開したいという時。
そのためだけに高額なオンプレミスのサーバー環境を用意するのは現実的ではありません。
クラウドサーバーは、必要な時に必要な分だけサーバーを借りて、自社のサーバーとして利用できる仕組みです。
小規模なホームページから大規模なWebサービスまで、多くの企業が活用しています。
代表例
・AWS EC2
・Azure Virtual Machines
・Google Compute Engine
※レンタルサーバーも広い意味ではクラウドサーバーの一種です。
●クラウドデスクトップ
会社のパソコンを自宅や外出先でも使えたら便利だと思いませんか。
クラウドデスクトップは、パソコンそのものをインターネット経由で利用する仕組みです。
会社と同じパソコン環境を、自宅や外出先から利用できます。
近年、リモートワークの普及とともに利用が増えている技術の一つです。
代表例
・Windows 365
・Azure Virtual Desktop
●クラウドネットワーク
会社の本社と支社をつなぐ。
自宅から会社のシステムにアクセスする。
こうした通信を実現するために必要なのがネットワークです。
以前は専用の機器を購入して構築することが一般的でしたが、現在ではネットワーク機能もクラウド上で利用できるようになっています。
そのため、場所を問わず安全に接続できる環境を、比較的短期間で構築できるようになりました。
例えば、自宅から会社のシステムへ安全に接続できるのも、こうしたネットワーク技術によって支えられています。
代表例
・Amazon VPC
・Azure Virtual Network
・Google Cloud VPC
●クラウドサービス
ここまで紹介したクラウドストレージやクラウドサーバー、クラウドネットワークなどのクラウド環境を活用して開発・提供されているのがクラウドサービスです。
利用者はサーバーやネットワークを意識すること無く、メールやチャット、Webシステム、生成AIを利用することができます。
サービス提供者がクラウド上に構築したシステムを、インターネット経由で利用しているのです。
GmailやChatGPTも、裏側ではサーバーやストレージ、ネットワークなど様々なクラウド技術によって支えられています。
代表例
・Gmail
・Microsoft 365
・ChatGPT
・Slack
クラウドで何をどう提供するのかについては、SaaS、PaaS、IaaS等の分類用語がありますが、今回はビギナー向けなので割愛しようと思います。
もしクラウドをさらに理解しようと思ったら、ぜひ上記の用語についても調べてみて下さい。

クラウドエンジニアってどんな技術者?
クラウドエンジニアは、クラウド環境を扱うインフラエンジニアの一種です。
インフラエンジニアとは、システムやサービスを利用するための土台を作るエンジニアです。
例えば、企業のホームページを公開したり、ネットショップを運営したり、社員が社内システムを利用したりするためには、サーバーやネットワークといったIT基盤(環境)が必要になります。
インフラエンジニアは、こうしたIT基盤を構築し、問題なく利用できる状態を維持する仕事です。
以前はサーバーやネットワーク機器を購入し、データセンターや社内に設置して運用することが一般的でした。
しかし現在では、多くの企業がAWSやMicrosoft Azure、Google Cloudなどのクラウドサービスを利用しています。
そのため、物理的なサーバーを設置する代わりに、クラウド上でサーバーやネットワークを構築する機会が増えました。
こうしたクラウド環境を中心に扱うインフラエンジニアを、クラウドエンジニアと呼びます。
もちろん、新人のうちから大規模なシステムの設計や構築を任されることはほとんどありません。
まずは監視や運用、保守といった業務を経験しながら、サーバーやネットワークの知識を身につけていきます。
そして経験を積むことで、クラウド環境の設計や構築にも携わるようになります。
一方でサーバーコンピューターの設置や配線、機器交換などの物理作業に関わる機会はほとんどありません。
扱う技術は変わっても、「システムを動かすための土台を作る」という役割そのものは変わりません。
そのためクラウドエンジニアには、クラウドサービスの知識だけでなく、サーバーやネットワーク、Linux、セキュリティなど、インフラエンジニアとしての基礎知識も求められます。
クラウドエンジニアになるためには?
今回の話をまとめると、クラウドとは、どこかの誰かが持っているコンピューターやシステムを、インターネット経由で利用する仕組みです。
私たちは普段からGoogle DriveやGmail、ChatGPTなど、様々なクラウドサービスを利用しています。
しかし、その裏側には物理的なサーバーやネットワークが存在しており、それらを支えるエンジニアがいます。
その一人がクラウドエンジニアです。
クラウドエンジニアは、クラウド環境を扱うインフラエンジニアの一種であり、サーバーやネットワークといったIT基盤をクラウド上で構築・運用する役割を担っています。
クラウドエンジニアを目指す場合、「まずAWSを勉強しよう」と考える人も少なくありません。
しかし、クラウドの知識だけを学んでも十分ではありません。
なぜなら、クラウド上で扱うサーバーやネットワークの仕組みそのものは、オンプレミスの時代から大きく変わっていないからです。
クラウドエンジニアには、クラウドサービスの知識だけでなく、サーバーやネットワーク、Linux、セキュリティといったインフラの知識も求められます。
ただし、最初からすべてを理解している必要はありません。
多くの場合は運用や保守といった業務から経験を積み、その中で少しずつ知識や技術を身につけていきます。
これから学習を始めるのであれば、まずはAWSやAzureに触れながら、
「サーバーとは何か」
「ネットワークとは何か」
を並行して学んでいくと良いでしょう。
基礎知識を身につけたうえでクラウドを学ぶことで、「なぜこの設定が必要なのか」「なぜこの構成にするのか」を理解できるようになります。
クラウドは今や多くの企業で活用されている重要な技術です。
IT業界を目指している方は、まずサーバーやネットワークの基礎を学び、その延長線上にクラウドがあることを意識しながら学習を進めてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




